![]() アイルランドのジョセフ・シェリダン・レ・ファニュ著「カーミラ」を読みました。 同じくアイルランドのブラム・ストーカー著「吸血鬼ドラキュラ」に大きな影響を与えたという事なので興味が湧いたのです。 レ・ファニュ君は、ブラム・ストーカー君のダブリン大学での先輩だそうです。 ![]() 「カーミラ」は1872年発表の作品ですが、当時アイルランドは憎きイギリスの一部でした。 そのイギリスは長い歴史の中で最も繁栄したヴィクトリア朝時代です。 科学の発展も目覚ましかった時代ですが、一方で科学では説明できないこういったものも好まれたようです。 (日本は明治5年で、太陰暦をやめて太陽暦を採用する事にした年だそうです。・・・何て事だ。) 「ドラキュラ」が日記や手紙などを駆使した凝った表現手法を用いたのに対し、こちらは吸血鬼に襲われた若い女性ローラの回想の体裁です。 「回想」なので臨場感はあまりなく、「回想」なのでローラは死んでいない事も分かるので、ある意味安心(?)して読めます。 物語の舞台はオーストリアの人里離れた古城です。 実は「ドラキュラ」も最初は先輩作家に倣ってトランシルヴァニアではなくオーストリアの話にしようとしたみたいです。 さて内容ですが、話としてはそれ程面白くないかもしれませんが、歴史的価値のある読物という感じでしょうか。 現代の刺激とスピード感のあるものと比べてあーだこーだ言うのは野暮でしょう。 吸血鬼とはどういうものか、という事も最後に登場人物のセリフを使って分かりやすく説明されています。 こういった基礎的な著作が無ければ、現代の多様な作品も生まれなかったかもしれないですよね。 ![]() この小説を百合族モノと位置付ける向きもあります。 若干そのような雰囲気はありますが、あくまで血を吸う為の手段のようにも思います。 その気になってはいけません。 実はこれを読む前に亜紀書房の「女吸血鬼カーミラ」を読んだ事があるのですが、訳が柔いし表紙も挿絵も漫画っぽい。 今回のBOOKS桜鈴堂の「カーミラ」は文章や絵から表紙の紙質まで雰囲気があり、ゴスっぽくて良かったです。 訳によって印象は異なりますので、翻訳者を選ぶのも大事ですね。 タイトルも簡潔にオリジナル通り「カーミラ」の方が良いでしょう。 KS |
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