
ノルベルト・ジャック著「ドクトル・マブゼ」をやっと読みました。
「ドクトル・マブゼ」と言えばフリッツ・ラング監督の1922年のサイレント映画が有名だと思います。
その時代のヨーロッパ前衛芸術は僕の好物ではあるのですが・・・
ドイツ表現主義の傑作とは言え、白黒・無声・4時間を超える古い映画はちょっと見る気がしませんでした。
それなら原作を読むかと学生の頃思ったのですが、ズルズルと今頃になってしまったのです。

マブゼという名前は「どこか(北杜夫とかロックバンドPROPAGANDAとか)で聞いたかな❓」という感じはあるかと思いますが、具体的には知らない人も多いと思います。
一言で言えば、著名なドイツの精神科医であり凄腕の賭博師であり変装の名人で、その上国際的な犯罪組織のボスです。
架空の人物ですけどね。

物語の中で相対するのはヴェンク検事という正義漢で、警察組織を駆使してマブゼを捕まえようとします。
但し、こちらは主役としては生真面目で退屈な人物です。
そして2人共に言える事ですが、犯罪小説の冷徹な登場人物にしては案外感情的で結構判断が狂います。
話の筋が面白いかといえば、先が読めない割にワクワク感はないでした。
時代のせいか、マブゼはえらく簡単に人を殺すし、ヴェンクの捜査も変に強引です。
その上、登場人物の思考回路が現代とは何となく違っているからなのか、感情移入できないんですね。
という事ではあるのですが・・・1920年代の前衛的だけど混乱して退廃的な文化の息吹はこの小説の中にも感じられました。
そう、「僕の好きな時代の特別なモノを読んだ」という満足感を得たです。
機会があれば、映画の方も見てみたいものです。
KS