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楽園の謎 2
アンリ・ルソー楽園の謎
岡谷公二著の「アンリ・ルソー 楽園の謎」の続きです。

ルソー君は、絵の雰囲気からも天然ボケで素朴な人だったイメージがあります。
周囲の芸術家からもからかわれたり担がれたりしていました。
が、本人はいたって真面目で、自分の絵に自信があったようです。
絵の売り込みにも活発で、意外ですが(嘘もついて)自分を大きく見せようとしていたようです。
セールス・トークが得意だったんでしょうか。
残念ながら効果の方は芳しくなかったようですが・・・。

また、ルソー君は、(本人弁では)リアリズムを追求していたようです.。
が、絵を見てわかる通りそれは「何かの間違い」でしょう。
人物を描く時は相手の身体計測をしたり、樹木を描く時は葉の一枚一枚正確に描いたり、同じ色から塗り絵のように塗ったり(色数で絵の値段を決めていたらしい)、本人は一生懸命なんでしょうけれど、やっている事は変てこです。
相手の顔を測って描いてもどれも全然似てなかったり、人物を描くと地面から浮いたようにしか描けないので足元を隠したり、と何とも面白いですね。
キュビズムなどに影響を与えたという説もありますが、それも「何かの間違い」もしくは「単なる偶然」もしくは「深読みしすぎ」でしょう。

けれども、彼の描いた絵の何とも言えない魅力(特に後期のジャングルの絵)はどこから来るのでしょうか。
絵の構成も、現代の目で見るとかえってスタイリッシュに感じます。
当時は子供の絵のように言われていましたが、そうでしょうか?
絵なんて結局は巧拙ではなくて好き嫌い、皆さんはどう思われますか?
次の絵は僕の最も好きな作品です。(勿論ルソー君の絵の中でという事ですが)
蛇使いの女
さてこの本、ルソー君にとって良い事悪い事どちらも客観的に書かれていますが、全般的に好意的な内容です。
著者のルソー君に対する愛情を感じました。
本によると、ルソー君にとって絵を描くことは「生き、呼吸しているこの現実と同じ密度・秩序・構造を持つ世界の創造をめざすこと」ではないか、との事でした。

内容も分かりやすいし読みやすくお勧めですが、ひとつ残念なのは図版。
題材にしている絵は全て(できればカラーで)、解説の近くのページに掲載して欲しいものです。
ゲージュツの本は、いくら素晴らしい文章でも肝心の作品が無いと「なんのこっちゃ」ですよね。
こっちはそんなに詳しくないのですから。

ところで、「小役人だった男が50歳頃に念願の画家になったけれどフランスから出る事もなくジャングルの絵を描いていた。」なんて言うと、本の題材としては退屈そうですが、読んでみると結構いろんな事があったみたいです。
但し、生前無名だった男の話なので、分かっている事(記録)が少ないのは残念です。

まあ、誰でも子供の時から正確な日記でも書き続けていなければそうなってしまいますよね。
日記があったとしても、主観的で信憑性に欠けるかもしれないし、大抵は本人以外には退屈な内容だろうし。
(ルソー君のように、死後に何かで有名になってプライバシーを洗いざらい詮索、検証、公表されるのも、それはそれで最悪。)

おまけ
もっと簡単に(30分ぐらい)ルソー君について知りたい、というめんどくさがり屋さんにはこの本。
「DADAルソーおかしなジャングル」はフランスで発行された子供向けのものの翻訳ですが簡潔かつ的確、母国の本だけの事はあります。
全てカラーで大きめの図版なので、見やすく分かりやすいです。
(何度も言うけど美術関係の本は図版が充実してなくちゃね。)
因みにタイトルのDADAとダダイズムとは勿論関係ありません。
DADAルソーおかしなジャングル
KS

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[2020/11/02 09:12] | | page top
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