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余った傘は・・・
余ったk傘はありません
鳥居みゆきの「余った傘はありません」という本を読みました。
たまたま同じ著者の「夜にはずっと深い夜を」という本を読んで興味が湧いたのです。
僕は知らなかったのですが、著者はお笑い芸人で、不条理なコントが得意なようです。

一般的に、芸能人が書いた本というと、ファン以外の評価は厳しいですよね。
どうしても、ゴーストライターがいるんじゃないの、口述して上手く書いてもらったんじゃないの、なんて勘ぐられます。
その手の本はスラスラ読みやすいものが多いし、文章が妙にこなれているとプロの手によるのではと思われる訳です。
確かにそういう事が多いでしょうし・・・。

話は少しずれますが、美術・デザイン・建築・音楽・学問などでも、その道の専門家(プロ)でない人による作品・発見などは、それ自体が優れていても正当に評価されない場合が多いと思います。
天才的絵画といわれていても、実は子供の絵だったりすると評価が無くなったりしますよね。
重要な古生物の化石を沢山発見しても、ほとんど名前さえ出なかったイギリス人女性もいました。

ところで、この方の本はよくできています。
短編集のようで全体が緩く繋がっている、という形式の小説です。
途中まで何の話か分からずとも、読者の興味は途切れないのです。
色々な文章的なギミックも満載で、時間軸も寸断されています。
人間の内面の暗部を謎解きを混ぜながら垣間見せた感じです。
今までこのような手法が無かった訳ではありませんが、これはまさしく本人の才能ではないでしょうか。

小説の内容や構成もそうなのですが、僕がひとつ興味を持ったのは、会話の話し言葉です。
全てがそうではないのですが、これは本当の話し言葉みたいだな、と思うところが随所にありました。
どういうことかというと、まるで会話の録音そのままのようなのです。
普通、そんなものはちゃんとした文脈になっていないし、話は飛ぶし、聞けたものではないと思います。
昔、自分の家族のお茶の間での会話を録音して聞いてみたら、何の話か分かりませんでした。
ホームドラマのようなつじつまの合った会話は現実には無いのですね。

この小説には、その分かりにくい生のような会話が出てくるのです。
読むとまどろっこしいのですが、本当の会話ってこんなものだよな、と感じました。
それがどうした、と言われると困りますが、こんな文章は珍しいので・・・新鮮でした。
実験的な印象を持ちました。

そう言えば、以前、雑誌に掲載された自分のインタビュー記事もとても読みやすいものに編集されていました。
元のままだったら面白かったのに。

KS

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[2019/07/04 08:22] | | page top
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