
少し前の話ですが、夜のダラダラしている時間にテレビで映画をやっていたので何となく観てみました。
後で知ったのですが、小津安二郎の「お早よう」でした。
私は人間が単純なのか小津の映画が不得意です。
退屈してしまうのです。
はじめから知っていれば観なかったかもしれません。
ところが、これは面白かった、というか何とも不思議な映画でした。
東京郊外の新興住宅地での幾つかの家族の群像劇です。
一応写真の2人(兄弟)が主役のようです。
近所付合いの軋轢や親への反抗などギスギスしそうな内容ですが、1959年の映画だからなのか小津だからなのか、何となくみんなとぼけたムードです。
さて、一番魅力的だったのは家です。
(私の職業のせいかな?)
同じ平屋の家が並んでいますが、完璧に均質的に並んでいて妙な魅力があります。
このような感じに同じ家を並べることは今ではあまり無いと思うので新鮮でした。
並んでいる家を住人達が行き来しますが、ひょこっと現れたり消えたりとても面白い絵になっています。
家の中も、和室中心ですが、モダンで古さを感じさせません。
カメラ・ワークは視線を低くして撮影していて空間のボリューム感を感じさせます。
また、水平垂直を重んじたアングルが多く(斜めから撮ったシーンが少ない)、矩形の居住空間の特徴を引き出しています。
とても構成的な構図の中で人が行ったり来たりしているのです。
話は何てことないのですが・・・。
もう一度観ても良いと思った映画でした。
実は、建築のアイディアはこのようなところにもころがっているのです。
KS