
「ショーン・タンの『アライバル』、評判の本だよね。」
「文字が無いので、絵本なのかな。」
「絵本と言えなくもないけれど、何かニュアンスが違うな。
漫画とも違うだろうし、『文字の無い本』なんて言われているけれど、そんな感じだね。」
「正確に言えば文字が全く無い訳ではなくて、絵の中にはたくさん出てくるわ。
キリル文字やハングル文字から発想したような架空の文字なんで誰も読めないけれど。」
「主役のおじさんも読めなくて困ってたね。
内容はどうだった。
サイトなんか見ていると、とても良かったという人と、ピンと来なかった人に分かれるようだけど。
なかには1回読んだだけだと話の筋が分からなかった人もいるみたいだね。」
「内容が難しくないだけに、何となく眺めていくと何となく終っちゃう。
で、何の話だっけ、ていう感じにもなるのかも。
私はそれほど感銘を受けなかった人のひとりかな。」
「僕は意外と良いと思った。
平坦な話と非日常的なシーン、ノスタルジックな作風と異質な風景、時間をかけて練られた本だと思う。」
「多分、そのアリガチなようで変わった話に入り込める人とそうでない人がいるんだと思うわ。
作者の世界観は一筋縄ではいかないようだし。」
「ところで、この本を見ていて思ったんだけれど・・・。
描かれている人間の表情やポーズが何となく変に感じるんだ。
とてもリアルなんだけれど、普通、画家が描く表情やポーズとは違うように感じる。
まるで動画のフィルムからカットを選んでいるような感じかな。
あまりうまく言えないけれど。」
「作者が映像作家らしいから、そうかもしれないわね。
ひょっとしたら実際に動画を撮影して描くカットを決めているのかもしれない。
確かに画家が想像やポーズをとらせて描くショットとはズレがあるように思うわ。」
「良い悪いは別として、そうだよね。
さて、ショーン・タンの本はこれ以外にもあって、『遠い町から来た話 』も面白かった。
是非ご覧あれ。」