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ホルモン、いやホルモー
鴨川ホルモー
「『鴨川ホルモー』は、最近映画にもなったんで知っている人も多い小説だよね。」
「映画は見てないけれど、本が面白かったからそろそろDVDを借りようかしら。」
「京都の大学に通ってたから、親近感があったんじゃない。」
「京都の地名がたくさんでてくるから、街が目に浮かぶようだったわ。
でも、私の大学が出てこなかった。
京都芸大はマイナーなのかな。」
「出てきた大学は、京大を含めて4つだからしょうがないよね。」
「細かいことだけど、話し言葉が標準語だったのも何となく京都らしくなかったかな。」
「話し言葉の扱いは小説でも映画でも悩ましい問題だよね。
地方の話だからといって、必ずしも方言なら良いというわけでもなくて、かえってストーリーに入り込めないこともあるから。
作者も関西弁にするかどうか悩んだんじゃないかな。」
「一応、みんな下宿生という設定になってたわ。」
「話の中身は?」
「お気楽な大学生が、ある同好会に入って世にも不思議な世界に巻き込まれていく・・・。」
「それじゃ、前のサマータイムマシン・ブルースと同じじゃん。」
「内容も印象も全く違ったわ。」
「確かに文章も、わざとなのか書生っぽい語り口で、時代がかった印象があるよね。
イメージとしての古都を感じさせるような。」
「学生達が私達の大学生時代と違和感が無くて、不思議な感じ。
人間の中身ってあんまり変わってないのかしら。」
「肝心の内容なんだけれど、町中でメチャクチャやっている一方、心の内面もよく描かれていてとても面白いんだけれど、実は同好会の内輪の話なんだよね。」
「そう。それ以上に広がっていかないところが今の世相を反映しているのかな。」
「ところで、本の表紙って意外と大事なんだけれど、ほのぼのとしていて内容に合ってるね。
ご存知、ビートルズのアビイ・ロードのパロディーだ。
でも、本の内容からすると4人じゃなくて5人じゃないの。もしくは10人。」
「5人のうち2人はふたごだから、1人2役でこれでいいのかも。
それより、人物の表情を見ると実はネタバレになっているのよ。」
「それは僕も読みながら思った。
いずれにせよ、これも家族みんなが読んだ何とも不思議な面白い本だったよね。」

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[2009/11/04 10:59] | | page top
穴穴穴穴
穴HOLES穴HOLES DVD
「ルイス・サッカーの『穴 HOLES』という小説だよ。」

「一応、子供向けのようだけれど、大人も十分楽しめるわ。」

ニューベリー賞を受けているけれど、実はこの賞の受賞作品はどれも面白いよ。子供向けだけど。」

「そうすると子供向けって何、ていうことになるわ。
中学生以上を対象にした本は幼稚な内容では無いし、勿論大人が書いているんだから、掘出物もあるわね。」

「内容は、砂漠にある子供の犯罪者の更生キャンプの話だね。
少年たちは、毎日とにかく穴を掘らされている。
主人公は、何のとりえもないごく普通の少年だけど、運だけは悪い。
息苦しい出だしだけれど、何となく漂うポップな雰囲気が重苦しさを緩和させているね。」

「キャンプでの生活と、遠い過去にさかのぼった昔話とが交錯して、とんでもない話になっていくわ。」

「最後に全てがひとつに結びつく構成とテンポが良くできているね。
映画の方はどうかな。」

「ディズニーがこんな話の映画を作ってたとは・・・。
日本では余り知られていない映画じゃないのかなあ。」

「ほぼ原作通りなんだけれど、本を読んだ後に観ても面白かったよ。
ディズニーで作っていなければ、もう少しシニカルでグロくなってたかもね。」

「キャンプの所長がシガニー・ウィーバーなんで、(原作とは違って)実は良い人だったんだ、なんて話になるんじゃないかって少し心配しながら観てたのよ。」

「それじゃ、話の印象が違っちゃうよね。ディズニー的になるけど。
しかし、この人、思わぬところに出てくるね。」

「原作も映画も、繰返して読んだり観たりしても十分楽しめるんじゃない。」

「そうだね。
実はこの小説には続編や関連話があるけれど、そっちはイマイチだったな。
とにかく、穴は、日本では穴に隠れた名作だね。」

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[2010/02/14 15:11] | | page top
秘密の庭の話は多いけれど
裏庭
「梨木香歩の『裏庭』だよ。
『西の魔女が死んだ』で有名な作家だけれど、こっちはスケール感があるね。
最初は『ドーム郡シリーズ』のような感じになっていくのかな、と思ったけれど全然違った。」

「ファンタジー仕立てだけれど、内容にはシビアな面もあるし、個人に密着した話だわ。」

「ある意味、今風な話だった。
ある少女が荒れ果てた洋館の鏡から秘密の裏庭に入り冒険の旅にでる、というのが大筋だよね。」

「そう。そしてその家族や関係のある人達の話もまとわりついてくるわ。」

「話は重層化しているので、単純な冒険談ではないね。
話はそれるけれど、『デパートへ行こう! 』もそうだったけれど幾つかの別々の話が同時進行して最後に結びつく、というパターンがあるけれど、映像では分かりやすく格好良くできるけれど、文章では辛い場合もあるね。」

「読む立場で言うと、独立して同時進行する話は3つ以内、できれば2つぐらいがいいわね。」

「章が変わって見知らぬ話に飛ぶと、気分的に疲れる時があるよ。」

「この小説にもどるけれど、人生に於いて過去のドロドロとしたいやなことや痛みを浄化しないと、自己の良い部分の開花は無いわけなのよ。
そして、自分の周りの人達とも地下茎のようなもので繋がっていて、関係が無いようでも互いに関連性を持ち合っていて、影響を及ぼしあっているのね。
たとえ死んだ人であっても。」

「最後には登場人物各々、現実と折り合いをつけるんだけれど、その後のエピローグが何とも雰囲気があって良かったと思う。
こうなって欲しいと思ったエンディングだったよ。」

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[2010/03/10 08:52] | | page top
坂本龍馬 もしも話
相棒
「今回は五十嵐貴久の『相棒』だよ。
ブームの『龍馬』関連ということで・・・。」

「こともあろうに坂本龍馬と新選組の土方歳三が、幕府の命を受けて徳川慶喜暗殺未遂事件の犯人を捜す、という架空の話よね。
私は新選組のファンなんで興味をもったけれど、『もしも話』は不得意かな。
NHKで龍馬をやってるからって、これを初めに読む人は少なそうね。」

「でも、歴史小説が全て史実に則って書かれていたらどれも似たり寄ったりになるんで、これはこれで楽しめたよ。
僕は龍馬は昔から好きだけど、新選組は大嫌いだな。」

「宿敵のような坂本龍馬と土方歳三がチームを組む意外性にはびっくりしたけれど、2人のやりとりは『こんな感じだったかもしれないな』って思ったし、妙に真実味があったわ。」

「ところで、こんな雰囲気って映画でもあったね。」

「エディ・マーフィとニック・ノルティの『48時間』でしょ。
限られた時間で、立場の違う気の合わない2人組みが力を合わせて犯人探しをする話ね。
それとも『シュレック』のことを言ってるの?」

「まあ、こういった設定の物語自体は時々あるけれど、2人の会話が面白いと大抵話も面白いね。
本に戻るけれど、確かに2人の組合せや掛け合いも面白いんだけれど、視点を変えると、幕末という歴史背景の中で色々な登場人物が自分の複雑で微妙な立場を解説しているようで、案外頭の中が整理できたよ。
主人公の2人が言わばインタビュアーの役割もしている感じだね。」

「この話での龍馬の結末も、こうだったら良かったのに、というみんなの夢よね。
でも小中学生は幕末の歴史をしっかり学んでから読んだ方が無難ね。
何が本当だか分からなくなっちゃう。」

「また真面目なこと言っちゃって。
ところで、五十嵐貴久の作品は社会派娯楽系の小説が多いようなんだけれど、題材が驚くほど多岐に渡っているのが特徴だよ。
似た題材の本が少ないんだけど、『幕末もしも話』はもうひとつあるんだ。
この本が気に入ったら『安政五年の大脱走』もどうぞ。」

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[2010/03/25 17:29] | | page top
幕末もしも話 再び
幕末もしも話
「前に龍馬のもしも話を紹介したけれど、これも幕末のもしも話だよ。
同じ作家、五十嵐貴久の『安政五年の大脱走』。」

「映画の『大脱走』をモチーフにしているのかもしれないけれど、全く違った内容ね。」

「今回は井伊直弼と側近が登場するけれど、それ以外は架空の人達だと思う。
井伊直弼が、ある小藩のお姫様を見初めるけれど、側室になることを渋られる。
そこで、その小藩の江戸勤務の武士達とお姫様を上の表紙のような山の頂上に監禁するわけだ。
お姫様が側室になることを了解すれば武士達を解放する、という条件付だけどね。」

「逃げようの無い断崖絶壁の頂上から穴を掘って逃げよう、というのはなかなか笑えるわね。
上の絵で立体的に考えてみてよ。
いくらなんでも無理があるんじゃない。
そして、ラストにはどんでん返しが用意されているけれど、それもちょっとやりすぎかな。」

「階級社会に暮らす武士達が、極限の収容所生活を送っているうちに身分を越えて実力や技能のある者を敬うようになっていくのも面白いね。
ところで、主題と関係ないんだけれど、籠(かご)に乗ると籠酔いする、という話に興味があったな。
そんなこと考えたこともなかったけれど、確かに長い時間乗ったら気持ち悪くなりそうだよね。
籠に付いている紐を持っていると酔い止めになる、ていうのは本当なのかな。
それから、距離を測るための目測のやり方も参考になったよ。
かなり誤差がありそうだけれど。」

「しかし、この話の井伊直弼はヒマと言うか身勝手と言うか、おバカの標本みたいね。
こんなことしてる場合じゃなかったんじゃないの。」

「いや、意外と今の人間より、江戸時代は幕末でも時間はあったんじゃないのかな。
歴史の教科書に出ていることだけやってたわけじゃないし、あとは何をしてたか分からないよね。
それから、この手の幕府の陰謀は、相手の藩も分かってはいても大っぴらにはできないから、こんなとんでもないことでも世間に知れない可能性はあるね。」

「まあ、よくこんなこと考えたわね。
もちろん、作者がよ。
無茶苦茶な話に強引に引き込んでいく語り口には敬意を表するけれど。
あまりに荒唐無稽な話で、私は感情移入できなかったな。」

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[2010/04/06 08:22] | | page top
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