今回から暫く、ガイア・アソシエイツで今年設計したMT邸改修工事をご紹介します。
ご近所の2世帯住宅(木造の戸建て住宅)のリフォームです。 ご近所は良いものです。 現場まで歩いて5分もかかりません。 道に起伏があるので、事務所の前から見えそうです。 それでも今まで設計した中では、6番目ぐらいに近い工事でした。 大きな木造の2世帯住宅の子世帯(2階)の部分改修です。 今回の計画では、全くプラン(間取り)変更をしていません。 「リーゾナブルな予算で最大の効果を」ということを目標に設計を始めました。 過去にも増築などをしており、住んでいる人も変化しているので、本当は間取りに無理がある部分もあるのですが、逆にその部分はいじらない(改修しない)という方法をとりました。 何故かというと、そういう(間取り変更をした方が良い)部分も綺麗に仕上げてしまうと、後でますます直しにくくなるからです。 「後で改修する可能性のある部分には手をつけない」これはリフォームの基本だと思います。 ![]() 当初の依頼は、2つある子供部屋の仕上変更(模様替え)でした。 特に片方の部屋(写真)はこのように木に暗い色を塗った壁でした。 (昔この内装が流行ったのか、ある時期の家に多いです。) 好みにもよりますが、年頃の女の子の部屋としてはイマイチでした。 年数も経っているので床鳴りもしました。 「それじゃ、子供部屋2つをリフォームしますか」ということになりかけました。 けれどもここで、「ちょっと待てよ」と思いました。 続く。 KS |
ガイア・アソシエイツで設計したMT邸改修工事の続きです。
![]() このお宅には何年も前から遊びに行ったりしていて、インテリアの相談も受けていました。 写真は改修前のLDです。 一見平凡ですが、ソファ、デスク、壁の写真などを見ると、「○○○な部屋にしたい」という潜在的サインがあり、気持ちが伝わってきました。 ラフな感じのロフト的アトリエといったイメージでしょうか。 奥様はイラストを描かれるので、LDは実際にアトリエとしても使用しています。 前回、子供部屋の改修を希望されたけれども、「ちょっと待った」と言いました。 実は、個室だけを改修しても家族全員の満足感はイマイチ得られません。 何とかみんなの集まるLDも改修できないかと考えたのです。 (要は予算的工夫ですね。) また、子供部屋のひとつはLDから引戸で直接つながっているので、よけいに両方の部屋を綺麗にできないかと思いました。 ところで、この写真と似た雰囲気の住宅に住んでいる方は多いのではないでしょうか。 そして、家具や調度品、カーテンなどを工夫してみても、インテリア雑誌に出ている部屋のようにならないのを不思議に思っている方々も多いと思います。 多分、壁紙を変えたとしても大きな手応えは無いでしょう。 何故なのでしょうか。 実は、扉・収納・窓枠・廻縁(天井と壁との境の細い材料)・巾木(床と壁との境の壁に付く細い材料)がインテリアの印象(イメージ)を左右(規定)しているのです。 この家で言えば、写真のこげ茶色の部分です。 改修をしてもこれらの色を変えることは少ないでしょう。 何故かと言えば、お金のかかる部分だし、工事としても交換するのが大変だからです。 そして家中に展開しているものなので、全て変えると思っただけで気が重くなりますよね。 また、これらは色数の少ない既製品を使用していることが多いので、どの家もだいたい同じ雰囲気になるのです。 (建築雑誌やTVに出てくる家ではあまり使用されていません。) 続く。 KS |
ガイア・アソシエイツで設計したMT邸改修工事の続きです。
予算的な目処がたち、LDと子供部屋2室を改修することになりました。 その工夫は、今後パラパラと具体的に説明していきます。 改修する3室は連続性を持たせるために、同一デザインにしました。 家としての統一感もでますし、広々と感じます。 また、一般的に材料の種類を少なくした方が省予算となります。 間取りの変更はありませんが、床鳴りは下地を剥がして直します。 ![]() これはLD(食堂・居間)のパース(完成予想図)です。 LDの床は直したばかりなので既存のままのフローリングです。 予算的には助かります。 子供部屋は白いフローリングにします。 壁・天井はクロスを貼り変えます。 向かい合わせの壁を白、ペールグリーンに貼り分けます。 天井は黄色で、一室に3色です。 この辺りは建築主も大いに悩まれたそうです。 こちらとしてはそんなに変わった提案のつもりでは無かったのですが、壁や天井が白やベージュでは無い、幾つかの色を同じ部屋に使う、というのは生活経験が無いので決断するのに勇気が要ったそうです。 (私の経験上、かなり思い切ったことをしたつもりでも、できてみたらたいしたことありません。) 照明器具はライティングダクトに電球色蛍光灯スポットライトです。 後から家具レイアウトなどを変更しても、それに追従できます。 窓装飾はカーテンをやめ、シンプルなロールスクリーンにします。 さて前回解説した扉や枠等をどうするかが問題になりました。 これらが茶色いままでは、ハウスメーカーの家と変わりません。 扉などを交換すると高価なので、今回は全て上から塗装することにしました。 綺麗に塗ってもすぐに剥がれては困りますが、良い塗料がある、ということでそうしました。 また、ラフなロフト風にしたいので、塗料もベタベタ塗った感じでも良いし、後で多少剥がれた感じになっても味だ、ということになりました。 扉のデザインが多少様式的だったのですが、ペールグリーンに塗るとそのミスマッチがかえってポップになるのでは、と期待しました。 元からある置家具ともフィットするでしょう。 (テーマ色のペールグリーンはデスクの脚に近い色でもあります。) これがガイア・アソシエイツの考えるハイタッチ・ロフト・アトリエです。 KS |
暫く間が空いてしまいましたが、ガイア・アソシエイツで設計したMT邸改修工事の続きです。
前回のLDに続き、子供部屋のパース(完成予想図)です。 子供は2人で、年頃の女の子です。 子供部屋は、買い増す収納家具のことも考えながら計画しています。 ![]() これはお姉さんの部屋です。 今回の計画では、個室と言えどもデザインを家単位で統一しています。 前回のLDのパースを見ていただければ3室共同じデザインで展開しようとしていることが分かると思います。 簡単に言いましたが、家族によっては意思統一をするのはとても難しいです。 今回は家族でよく検討された結果、デザインを統一することになりました。 とても良かったのではないかと思います。 ![]() これは妹さんの部屋です。 「MT邸 1」のブログの既存写真をもう一度ご覧下さい。 ほぼ同じアングルです。 この部屋だけは壁のこげ茶色の板を残して、その上から白く塗装することにしました。 「板に塗り重ねた塗装の味」も今回のデザインイメージに合うと思ったからです。 そして、板を外して(もしくは板の上に)新たにボードを貼って、その上にビニールクロスを貼るのでは、無駄に予算がかかるからです。 ここで、また省予算のコツです。 壊して作るのはもったいない作業です。 出来るだけ既存の下地を活かし、仕上げの方法をデザイン的に工夫しましょう。 仕上げの種類が違ってもデザインを統一していくことは可能です。 ものにもよりますが、塗料は比較的材料代としては安いです。 そして、塗装は色を自由に選ぶことができる楽しい仕上げでもあります。 次回から工事に入ります。 KS |
ガイア・アソシエイツで設計したMT邸改修工事の続きです。
工事範囲、設計内容、デザイン、仕上材料、工事金額などが決まり、工事契約をしたら着工です。 ![]() 壁の既存のビニールクロスは剥がしてしまうので、解体前ならこんなことを描いても大丈夫です。 イラストレーター(建築主)らしいおもてなしですね。 「下地」と書いてあるのは、ここに絵を掛けるフックを付けられるように既存の石膏ボードを部分的に外して木の下地を入れる、という印です。 切れ目も入っていますね。 ![]() 以前、他の建築の紹介でも登場したと思いますが、内装仕上に関してはこのようなパネルをガイア・アソシエイツで作成します。 部屋毎、部位毎になっているので、例えばLDの天井は何かな、というのがすぐに分かります。 本物の材料が貼ってありますから、このパネルを現場に常備しておけば、建築主も工事関係者も便利だと思います。 また、職人さんがこれを見て、ビジュアル的に確認しながら間違えずに施工すれば、綺麗に早く仕上がります。 実は、見積時に仕様をきっちりと決めておくこと、工事契約時までに色や品番を決めておくこと、これも省予算のために大切なことです。 色々な決め事が工事中になったり、変更が多いと、工期が延びたり、作り直しになったり、発注のやり直しになったりして、最後に追加の請求がくることにもなりかねません。 できるだけ工事契約時には全て決まっていることを目標にしましょう。 そのためにも設計事務所が提出する図面、パース(完成予想図)、模型、仕上見本などは、しっかりと見て、できあがる空間をイメージするようにしましょう。 分からないことは、設計打ち合わせ中にどんどん設計者(建築家)に聞くと良いでしょう。 とは言え、工事中に変更や追加は付き物です。 早いタイミングなら問題無い場合もあるので、それも設計者に相談すると良いでしょう。 ところで、今回は約20日の工期で、住みながらの改修です。 住みながらだと余計なお金(間借り・引越費用など)がかからないで良いのですが、工事中避難できる部屋の確保、水廻りがどのぐらい使えるか、など綿密な計画が必要です。 住みながらは案外大変です。 今回の場合、2世帯住宅だったので、そちらに避難していただきました。 KS |